「iDeCoは年末調整で控除できる?」
「iDeCoの書類が年末調整に間に合わなかった」
「iDeCoで年末調整をするといくら戻って来るか知りたい」
iDeCoに加入している人の中には、このような悩みを持っている人が多いでしょう。
結論をいうと、iDeCoの掛金は年末調整で控除できます。ただし、確定申告が必要になるケースもあるので要注意です。
本記事ではiDeCoを年末調整するやり方や、確定申告が必要なケースについて解説します。
最後まで読めば、iDeCoに加入している人も安心して年末調整や確定申告に備えられるので、ぜひ参考にしてみてください。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は年末調整で申告できる
iiDeCoが年末調整で控除を受けられる理由や、いくら戻ってくるのかについて以下二つを解説します。
- iDeCoは「小規模企業共済等掛金控除」の対象で年末調整が必要
- iDeCoは年末調整でいくら戻ってくるのか解説
それぞれ解説するので参考にしてみてください。
iDeCoは「小規模企業共済等掛金控除」の対象で年末調整が必要
iDeCoの支払金額は「小規模企業共済等掛金控除」の対象になるため、全額控除ができます。
小規模企業共済等掛金控除は、15種類ある所得控除の一つ
小規模企業共済等掛金控除で控除できる掛金は、以下のとおりです。
- 確定拠出年金
- 小規模企業共済契約の掛金
- 心身障害者扶養共済制度の掛金
参考:国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」
iDeCoは控除の対象になるため、加入している場合は、控除申請をしましょう。
iDeCoは年末調整でいくら戻ってくるのか解説
iDeCoの掛金を年末調整すると、戻ってくる金額は「iDeCoの掛金金額×所得税率」です。
実際に戻ってくる金額例を以下の表で確認しましょう。
| 年齢 | 43歳 |
| 掛金/月 | 16,000円 |
| 掛金/年 | 192,000円 |
| 年収/年 | 4,600,000円 |
| 給与所得控除/年 | 1,360,000円 |
| 社会保険料控除/年 ※1 | 661,940円 |
| 基礎控除(所得税) | 480,000円 |
| 基礎控除(住民税) | 430,000円 |
iDeCoに加入して、控除申請した場合の税額は以下のとおりです。
| iDeCo加入時 | iDeCo未加入時 | |
| 課税所得(所得税)※2 | 1,906,000円 | 2,098,000円 |
| 課税所得(住民税)※2 | 1,956,000円 | 2,148,000円 |
| 所得税額 | 95,300円 | 112,300円 |
| 住民税額 ※3 | 195,600円 | 214,800円 |
※2 課税所得=年収-給与所得控除-社会保険料控除-基礎控除(端数金額処理はなし)
※3 住民税=一律10%
1年に減額できる金額は、下表のとおりです。
| 1年の軽減額 | |
| iDeCoによる所得税軽減額 | 17,000円 |
| iDeCoによる住民税軽減額 | 19,200円 |
| iDeCoによる税制優遇額 | 36,200円 |
表の条件の場合、iDeCoの掛金を年末調整で申請すれば、3万円〜4万円が戻ってくるとわかります。iDeCoに加入していていくら戻ってくるのか確認したい場合は、公式サイトでシミュレーションができるので試してみるとよいでしょう。
iDeCoで年末調整するケースと確定申告するケース
iDeCoは以下のように、年末調整をするケースと確定申告をするケースがあります。
- 年末調整と確定申告の違い
- 年末調整が必要なケース
- 確定申告が必要なケース
それぞれ解説するので、あなたがどこにあてはまるか確認しましょう。
年末調整と確定申告の違い
年末調整と確定申告は、どちらも所得税に関する手続きであり、以下のような違いがあります。
- 年末調整:会社があらかじめ徴収していた源泉徴収税額の過不足を調整する
- 確定申告:1年間の利益にかかる所得税を自分で申告をする
引用:国税庁「給与所得者(従業員)の方へ(令和5年分)」
一方確定申告は、給与所得以外の所得にかかる所得税を個人で申告して、納付をします。つまり年末調整は、会社員やアルバイトなど、勤務先で給与をもらっている人しかおこなわないものと覚えておけば問題ありません。
年末調整が必要なケース
iDeCoの加入者で年末調整が必要なのは、給与所得をもらっている人です。
給与所得の支給がある人は、勤務先が年末調整をおこないます。たとえば会社員や契約社員、アルバイトなどで働いている人です。
勤め先が一ヶ所で、それ以外に収入がない場合は、iDeCoに加入していても年末調整で掛金控除を受けられます。
確定申告が必要なケース
iDeCo加入者で年末調整の対象でない人は、確定申告で控除を受けられます。確定申告が必要な人は以下のとおりです。
- 個人事業主(自営業やフリーランス)
- 給与以外の所得が20万円超の人
- 退職所得があり、退職所得の受給に関する申告書を提出していない人
- 所得税の猶予を受けている人
- iDeCoの提出書類が年末調整に間に合わなかった人
- iDeCoの初回積立日が10月以降だった人
給与所得以外の収入がある人は、基本的に確定申告をおこないます。
iDeCoも確定申告の際に控除手続きができるので、覚えておきましょう。
iDeCoの年末調整の流れ
iDeCoの掛金を年末調整で控除するときの流れは以下のとおりです。
- iDeCoの年末調整に必要な証明書や書類をそろえる
- 申告書を記載する
- 書類と証明書を勤務先に提出する
年末調整が始まる前に流れを確認しておけば、余裕を持って準備がでるので、順番に確認しましょう。
1.iDeCoの年末調整に必要な証明書や書類をそろえる
年末調整でiDeCoの掛金を控除するには「小規模企業共済等掛金払込証明書」の原本が必要です。
証明書は以下の時期に、国民年金基金連合から送付されます。
| 積立開始時期 | 到着時期 |
| 1月から9月 | 10月下旬 |
| 10月以降 | 11月から翌年1月 |
積立を開始した時期によって証明書が届く時期も変わります。年末調整の用紙が配られる11月ごろまでに、証明書を用意できるように確認しましょう。また、小規模企業共済等掛金払込証明書の原本は再発行も可能です。しかし、再発行には時間がかかるので、手元に届いたらなくさないように保管してください。
申告書を記載する
年末調整が近づくと勤務先から「給与所得者の保険料控除申告書」が配布されるので、iDeCoの掛金を記載しましょう。記載場所は以下のとおりです。
参考:国税庁「給与所得者の保険料控除申告書」
給与所得者の保険料控除申告書の右下に「小規模企業共済等掛金控除」を記載する場所があります。上の画像の赤い枠に、1年間で支払った総額を記載してください。
書類と証明書を勤務先に提出する
「給与所得者の保険料控除申告書」に記載できたら「小規模企業共済等掛金払込証明書」と一緒に会社に提出しましょう。
年末調整の手続きが終了すると、12月の給与支給時に還付金が戻ってきます。
iDeCoの年末調整が間に合わないときは確定申告する
iDeCoの掛金控除が年末調整に間に合わない場合は、確定申告をします。
iDeCoの確定申告について以下の内容を確認しましょう。
- 確定申告のやり方
- 確定申告に必要な書類(給与所得がある場合)
- 確定申告に必要な書類(個人事業主の場合)
- iDeCoで確定申告を忘れた場合の対処法
会社員や公務員のように給与所得をもらっている場合でも、書類が年末調整に間に合わなかった場合は確定申告をするので、参考にしてください。
確定申告のやり方
iDeCoの掛金を確定申告するやり方は以下のとおりです。
- 必要書類や証明書を用意する
- 確定申告書を記載する
- 期限内に税務署に確定申告書を提出する
確定申告の期限は2月16日から3月15日なので、それまでに進めてください。書類がそろったら、確定申告書に必要事項を記載しましょう。
提出方法は手書きで提出するか、オンラインで入力するかです。確定申告書は国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスして作成できます。
確定申告に必要な書類(給与所得がある場合)
給与所得のある人がiDeCoの掛金を確定申告する場合は、以下の書類が必要です。
- 給与所得の源泉徴収票
- 小規模企業共済等掛金払込証明書
- その他の控除の証明書類
給与所得の源泉徴収票は、年末の給与明細とともに支給される場合が多いです。書類が集まったら確定申告書に記載します。
記載場所は以下の画像で確認しましょう。
確定申告書第一表の左下にある「小規模企業共済等掛金控除⑭」欄に、iDeCoの1年間の掛金を記入します。つづいて、確定申告書第二表の「小規模企業共済等掛金控除」欄にも「小規模企業共済等掛金払込証明書」の総額を記載しましょう。
参考:国税庁「令和5年分の所得税等の確定申告書 (案)」
上記画像の赤枠が記載場所です。申告書の記載が完了したら税務署に提出しましょう。
確定申告に必要な書類(個人事業主の場合)
自営業やフリーランスの人が確定申告でiDeCoの掛金控除をするときには、以下の書類が必要です。
- 事業所得における収支内訳書または青色申告決算書
- 小規模企業共済等掛金払込証明書
- その他の控除の証明書類
会社員との違いは、源泉徴収票ではなく「事業所得における収支内訳書または青色申告決算書」が必要な点です。書類が集まったら、給与所得がある場合と同じく、確定申告書に記載します。
iDeCoで確定申告を忘れた場合の対処法
iDeCoの確定申告を忘れてしまった場合は、還付申告で対処できます。
還付申告は、もともと納めすぎた所得税を還付する手続きです。
還付申告はiDeCoの掛金を支払った年の翌年1月1日から5年以内であれば申告できます。
参考:国税庁「No.2030 還付申告」
まとめ
本記事ではiDeCoについて解説しました。
iDeCoは会社員や公務員、派遣社員など給与所得を得ているのであれば、年末調整で控除申請ができます。
ただし、掛金の積み立てを開始した時期が遅く、年末調整に間に合わない場合は個人で確定申告をしましょう。
確定申告は、専門知識が必要なので一見難しそうですが、会計ソフトを使えばスムーズに申請できるので、試してみてください。